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中村 健吾

人間はどうして権利をもちうるのか
―ドイツ観念論における「自然」から「社会」への視座の転回―


June, 2009

 
     
   
     
 

Abstract

 
 
 近代自然法思想における「自然の権利」という観念が、フランス革命の「人ならびに市民の権利宣言」において「人間の権利」へと姿を変えて以降、哲学者たちは、「人間はどうして権利をもちうるのか」という問いをめぐって格闘してきた。そうした格闘は、フランス革命のインパクトを受けながら展開された思想運動であるドイツ観念論がおし進めた「自然法の脱自然化」のなかにとくに見いだされる。カントは、自然法の根拠をあれこれの「人間本性(Natur des Menschen)」のなかに探し求める試みを峻拒した。フィヒテは権利の根拠を、社会的なコミュニケーションをとおした「人格」の「相互承認」のなかに求めた。そしてヘーゲルは、市民社会における日々の労働と商品交換こそが権利の母胎であると考えた。本稿では、ドイツ観念論が切り拓いた人格と相互承認の論理による権利の基礎づけの今日的な意義を考察している。

 
 
 
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