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大西 祥惠

被差別地域と社会的排除―ターゲット型政策を中心に―


March, 2009

 
     
   
     
 

Abstract

 
 
 近年,社会的排除論への関心が著しく高まっている.そして,そうした概念を念頭においての政策の実施が試みられている.しかし,社会的排除論は海外の事象とのかかわりで用いられてきた概念であり,日本の事象を検討する際にそのままあてはめられるかというと,それは難しいといわざるを得ない.また,福祉国家がうまく機能していると考えられていた時代を振り返ってみると,そこでは,特に問題を抱えていると判断されたグループや地域に対してターゲット型政策が実施されていた.
 本稿の目的は,日本における代表的なマイノリティである被差別部落出身者を事例として取り上げ,第一に,被差別部落に対するターゲット型政策である同和対策事業の成果と課題を明らかにするとともに,第二に,被差別部落を事例として,社会的排除を日本的文脈から捉えるためにはどのような点を検討する必要があるのかについて検討することである.第一の点について,日本の同和対策事業においては,被差別部落出身者や被差別部落の実態における底上げが図られた.しかし,1990年代以降,大阪府の被差別部落においては「過疎化の兆し」がみられるようになった.第二の点について,その「過疎化の兆し」は社会的排除論の文脈で捉えるとすれば,空間的排除の状況がより一層深刻になったと考えることができる.そこで,社会的排除論が日本的な文脈においてどのように立ち現れてくるのかということを検討する方法の一つとして,日本の被差別部落における「過疎化の兆し」に着目し,そうした状況に至るまでの過程を詳細にみていく作業が重要になってくるといえるのである.

 
 
 
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