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田村 太一

アメリカの証券資本主義と所得格差


March, 2009

 
     
   
     
 

Abstract

 
 
本稿は、1990年代半ばから2007年までのアメリカ経済を、「証券資本主義」という視角からとらえ直し、この時期の所得格差を考察したものである。1990年代後半以降、一般の多くの人々が将来生活への年金拠出金や生活に身近な住宅購入を通じて証券資本に関わるようになり、「証券資本主義」はアメリカに深く浸透することになった。この時期には、世界中から有利な投資機会を失った過剰貨幣資本がさまざまなかたちをとってアメリカに流入したことを背景に、株式や不動産など資産価格は急速に上昇したのであった。こうした状況のもとで、国内では資産市場に依存した経済構造が形成されたのである。この経済構造の下では、景気拡大によって全般的な所得水準の上昇がみられたが、資産に規定された所得格差――特に実現キャピタル・ゲインによる所得格差は、今まで以上に拡大したのであった。ここに、資産市場が反転した際の、社会の不安定性を一挙に増大させかねない経済的要因がある。

 
 
 
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