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稲井 誠

E.ビュレの「貧困論」
−「貧困」と「政治経済学」批判−


March, 2007

 
     
   
     
 

Abstract

 
 
   19世紀前半のフランスでは、貧困は「社会問題」の中心を占めるものとして認識されるようなる。貧困問題は、社会の周辺的な存在である「物乞い」とは異なり、社会の中心に位置し、その土台までを揺るがしかねないものとして考えられ、「ポーぺリスム(paup?risme)」という現象として捉えられるようになる。このような状況において、貧困の実態を明らかにしようとする様々な社会調査が行われるとともに、道徳科学アカデミーによる貧困に関する研究のコンクールが実施された。本稿が分析の対象とするAntoine-Eugene Buretの『イギリスとフランスにおける労働者階級の貧困』は、このコンクールで最優秀賞を受けた著作である。この著作は、「貧困の分析がこのように詳細におこなわれたことはこれまでにない」(ルイス・シュヴァリエ)と評されるほど、貧困を理論および実証的側面にわたり包括的に扱ったものである。本稿では、とりわけ経済学評価・イギリス認識・貧困の定義と解決策を中心に彼の議論を見ていくとともに、思想史的な位置付けを試みる。
 
 
 
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